1960年代後半~2000年代まで、学校教育現場ではクラスルームに1台はOHP(Overhead Projector)がありました。フィルムシートを使い、社会科の授業で日本地図を映し、御自身のお住まいの県を指さしていた記憶がある方もいらっしゃると思います。
オーエスでもOHP向けに傾斜式スクリーンを製造しておりました。
その後1980年代からは視聴覚教室が各学校に整備され、映像・音響を利用した授業が始まりました。
この時に導入され始めた映像機器がCRT(ブラウン管)型3管式ビデオプロジェクターです。
光の3原色(RBG)を使った技術でスクリーン上に映像を結合させる方式で、非常に綺麗な映像がスクリーン上に映し出され視覚に訴える授業には適した機器でした。
しかし、難点は暗いことです。
今の時代では考えられませんが、300lm程度の明るさしかなく、その光源で100インチや120インチのスクリーンに投写をしておりました。
例えばビデオプロジェクター300lm、スクリーンサイズ120インチ、スクリーンゲイン1.0(ホワイトマット)の条件下ではスクリーンの画面輝度は21cd/㎡となります。
因みに映画館のスクリーンの画面輝度の基準は48cd/㎡となっており、明るさの比較をすると映画館の半分以下の明るさで視聴していたことになります。
映画館の明るさの半分なので、お客様やプロジェクターメーカーからは何とかスクリーンで明るさの補完の方法や、明るさを上げる技術ができないか、ご相談やお問い合わせを数多くいただきました。
オーエスも暗いのは認識しており、ホワイトマットのスクリーンゲインを上げることを開発テーマとして取り組んでおりました。
実は明るいスクリーンをオーエスではシルビネイト(反射特性)として以前から製造しておりましたが、あくまでも張り込みスクリーン限定で製造しており、電動巻き上げでの製造が困難で市場には不向きでした。
ゲインを上げる方法を数多く試行錯誤した結果、PVCの表面にビーズ粒子を施した製品が出来上がりました。
この製品が3管式ビデオプロジェクター用ビーズスクリーン(BS101)として、初めて製品となります。市場へは1980年頃から投入しました。
市場投入したビーズスクリーンはゲイン2.1と、ホワイトマットスクリーンと比べ2倍もの明るさを得ることができた半面、ホットスポット(中心部が明るく四方が暗く感じる)という現象も伴いました。
ビーズ粒子が粗く大きいため、粒子の脱落、映像の締まりに対して少し不満がある製品でもありました。
初代ビーズスクリーン(BS101)の不満を解決するため、オーエスでは新たなビーズスクリーンの開発に着手しました。
「ビーズ粒子は小さく、粒子の脱落防止、映像は均一」等を解決すべき課題とし、後のウルトラビーズ※(※OS登録商標)として1990年代半ばにリリースしました。
スクリーンゲインはハイゲインの2.4、ビーズ粒子はより細かく均一にして、ビーズの並びも均一に接着加工を施しました。
「ピュアマットⅡ開発ストーリー」でもふれておりますが、この均一に接着していることが原因で、3管プロジェクターを使うとカラーシフトがでてしまう、新たな問題点が発見され、課題となってしまいました。
2000年代になると3管プロジェクターから、新しい映像技術のDLPプロジェクターが市場へ投入されました。先発の液晶プロジェクターの光源性能もあがり、視聴するメディアに合わせてプロジェクターのパネル解像度も480p(いわゆるDVD画質)からハイビジョン720pを経てフルハイビジョン1080pへと変遷しました。
そのメディアを再生するDVDプレーヤーも個人で手が届く価格帯になり、これに歩調を合わせてDLPプロジェクターや液晶プロジェクターの価格も年々お求めやすくなり「自宅に映画館を!」が夢ではなく実現可能な状況になってきました。
この時もまた、スクリーンに対して市場から要求があがりました。主な声として
➀モアレが発生しない幕面
②高いコントラストを得ることのできる幕面
③3Dコンテンツ対応の幕面
等で、さらなる進化を求めた開発が始まりました。
課題➀に関しては、オーエスが独自に開発したファブリック系生地であるピュアマットシリーズを開発することで解決しました。
残る課題②や③に関しては、今までとは別の切り口からの開発が必要と考え、中期課題として開発しました。
日々試行錯誤を繰り返す中で、PVCに微細でランダムなビーズ粒子を施し、表面を少しグレー系のウレタンコートを施す製品工程で、課題を解決する方法を見つけました。
2010年に、ウルトラビーズプレミアムグレー(BU202)の発売を開始いたしました。
コントラストも向上し、ゲインがピュアマットよりも高いこともあって、アクティブ3Dメガネを掛け、立体感のある映像を表現できる3Dプロジェクターに対応した製品に仕上がり、トレンドになりつつあった3D映像市場にも参入しました。
同時に海外ではより明るくというニーズが多く、ゲインUPを図るため、グレー系のコートではなく、クリア系のコートを施した、ウルトラビーズプレミアムホワイト(BU201)を海外専売で販売も開始しました。
この時にはまだ4Kプロジェクター、4Kコンテンツの足音すら聞こえてきておりません。
2020年になりHDR、4K、8K等、技術の進化とともに考慮する要素も複雑になり、視聴環境や映像機器、コンテンツ、視聴位置の選定から提案まで、ますます複雑化し、オーエス開発陣に多岐にわたるテーマが課せられました
併せて、2018年から広階調型スクリーン「レイロドール(HF102)」をフラグシップとして発売したこともあり、暫くこの製品で展開できると踏んでいたことも事実です。
しかしながら、市場は変化しております。事実、映像を提供(視聴)に際して最後のハードウエアであるスクリーンに求められる要素「色温度、視聴環境、視聴コンテンツ、解像度(プロジェクター)」に対して、お客様が満足される製品に仕上げる必要があります。
今までは1つのフラグシップモデルをつくりだし、これぞNo1として市場に是非を問うスタイルでしたが、これが果たしていいものか?
自動車メーカーでもスポーツカーのフラグシップ、セダンのフラグシップ、RV車のフラグシップ等、用途にあわせ、それぞれのフラグシップ化が図られようとしております。
そこで今回は特に、アニメ映画、アクション映画やスポーツ観戦に適し、視聴環境ではリビングで視聴しても満足のいく製品つくりをコンセプトとし、お客様の視点に立ち、オーエス独自のビーズ粒子の検討から塗料の検討を始めました。
試行錯誤を2年以上繰り返しやっと、お客様にご満足いただける製品が開発できたと考えております。
それが、新しくリリースしたウルトラビーズ アキレイⅡです。
是非、リビングシアターのフラグシップモデル、アキレイⅡをご家族で迫力のある映像をお楽しみください。